Uro Care泌尿器の健康ポータル

前立腺生検は痛い?検査の流れ・合併症・結果が出るまで

前立腺生検が必要になる理由、会陰式と経直腸式の違い、痛み、出血や感染などの合併症、病理結果の読み方を解説します。

淡い青色の紙を重ねた丸い形に4つの金色の採取点が整然と並び、横のガイドと確認点が前立腺生検の流れを表した概念図
身体や針、組織を描かず、複数箇所を系統的に調べて結果を確認する検査の流れを、紙の層と採取点で表現しています。© Uro Care 医学編集部
01

検査室で最初に起こること

会陰式では仰向けで脚を開く姿勢、経直腸式では横向きまたは仰向けの姿勢が使われます。直腸内へ超音波プローブを入れ、前立腺の大きさ、形、MRI標的の位置を確認した後、局所麻酔を行います。

採取時にはバネ式の針が短く動き、「パチン」という音がします。標的部から数本、系統的生検として複数領域から組織を採り、各検体を場所ごとに分けて病理へ提出します。採る本数はMRI所見、前立腺体積、初回か再生検かによって変わります。

組織を採る時間は比較的短いものの、説明、麻酔、準備、検査後の排尿確認まで含めると滞在時間は長くなります。施設によって外来、日帰り入院、1泊入院という違いがあります。

02

画像の疑いを病理診断へつなぐ

PSAが高く、前立腺MRIに疑わしい場所が見つかった後、「画像で分かっているのに、なぜ針を刺すのだろう」と感じる方もいるでしょう。MRIは病変の位置と、臨床的に重要ながんである可能性を推定する検査です。生検は前立腺から細い組織を採り、顕微鏡でがん細胞の有無と性質を確かめます。

前立腺がんの治療選択には、がんがあるかに加え、Grade Group、組織の中に占める割合、陽性となった検体数が関わります。これらはPSAやMRIだけでは得られず、病理診断によって初めて分かります。EAUガイドラインでも、前立腺がんの確定診断は通常、生検組織の病理学的確認に基づくとされています[1]。

現在の生検では、治療や監視療法の選択に影響するGrade Group 2以上のがんを見つけることを重視します[1][2]。

03

標的生検と系統的生検を組み合わせる理由

MRIでPI-RADS 3〜5の病変がある場合、その場所を狙うMRI標的生検が行われます。MRI画像と超音波画像をソフトウェアで重ねる方法、術者が位置を頭の中で合わせる認知的融合、生検中にMRI装置内で採る方法があります。

標的生検は、疑わしい場所へ針を集中させる検査です。PRECISION試験では、MRIを先に行って陽性部位を狙う経路により、従来の系統的生検より臨床的に重要ながんが多く見つかり、治療対象になりにくい低悪性度がんは少なくなりました[6]。

MRIで最も目立つ病変は、前立腺内の一部を示す所見です。初回生検では、前立腺の左右や各領域から規則的に採る系統的生検を併用します。EAUの集計では、標的生検のみの経路に臨床的に重要ながんの見落としが含まれました[1]。

PROMISでは、mpMRIは臨床的に重要ながんを拾う感度が高いものの、確定診断には生検組織が必要でした[7]。MRI-FIRSTでも標的生検と系統的生検は互いに見逃す病変があり、初回生検で両者を併用する理由が患者単位の数字で確認されています[8]。

04

会陰式・経直腸式:感染率と採取経路

前立腺は膀胱の下、直腸の前にあります。経直腸式では超音波の器具を直腸へ入れ、直腸壁を通して前立腺へ針を進めます。会陰式では肛門と陰嚢の間にある皮膚から針を入れ、直腸内の超音波画像を見ながら組織を採ります。

会陰式は腸内細菌が針の経路へ入りにくく、感染を減らせる点が注目されています。PREVENT試験では、予防抗菌薬を使わない会陰式で感染が0件、直腸培養に合わせた抗菌薬を使う経直腸式で1.4%でした[3]。がんの検出率は53%と50%で、両群は同程度でした。

経直腸式は長く普及してきた方法で、短時間に多くの検体を採りやすい特徴があります。どちらの経路を選ぶかは、施設の設備、麻酔方法、過去の感染歴、標的病変の位置などと結び付きます。

05

痛みの内訳と麻酔

検査中の感覚には、直腸へ超音波プローブが入る圧迫感、局所麻酔の注射、組織を採る針の音と刺激が含まれます。会陰式では皮膚と前立腺周囲へ局所麻酔を行い、経直腸式では前立腺周囲の神経ブロックが使われます。

PREVENT試験では、会陰式の検査直後の痛みが経直腸式より10点満点で平均0.6点高かったものの、差は小さく、7日後には解消していました[3]。別の無作為試験や前向き研究をまとめた解析でも、両方法の痛みは麻酔技術や器具によって変わり、感染以外の合併症はおおむね近い結果です[4][5]。

緊張で骨盤底筋が強く締まると、超音波プローブの圧迫感が強くなります。痛みの中心が皮膚、直腸、前立腺周囲のどこにあるかで、麻酔の効き方も変わります。

06

抗血栓薬、感染歴、排尿状態を事前に確認

前立腺生検では細い針が皮膚や直腸、前立腺の血管を通るため、抗凝固薬や抗血小板薬の種類が確認されます。薬を中断することで血栓の危険が上がる場合もあり、処方理由と生検時の出血リスクを合わせて休薬の要否が調整されます。

尿路感染、発熱、カテーテル留置、過去の耐性菌、最近使った抗菌薬も、生検方法と感染対策へ影響します。経直腸式では予防抗菌薬や直腸内の準備が用いられ、会陰式では抗菌薬を減らす運用も広がっています[1][3]。

また、前立腺が大きい人、排尿の勢いが弱い人、残尿が多い人では、検査後の尿閉が起こりやすくなります。PSAやMRIに加え、普段の排尿状態も検査前情報の一部です。

07

血尿・血精液症の経過

生検後には尿へ血が混じる、精液が赤や茶色になる、会陰部に皮下出血が出るといった変化が起こります。経直腸式では少量の直腸出血もみられます。前立腺は血流が豊富で、尿道と射精管に近いため、採取部位からの血液が尿や精液へ混じります。

血精液症は見た目の変化が大きく、古い血液が赤色から茶色へ変わりながら、射精のたびに数週間かけて薄くなる経過が一般的です。血尿も排尿回数とともに薄くなることが多く、水分量によって色の濃さが変わります。

出血量には検体数、前立腺体積、抗血栓薬、運動や腹圧などが関わります。出血時は色の強さに加え、血の塊による尿の流れの変化と全身状態を確認します。

08

発熱と尿閉は対応が変わる合併症

生検後の感染では、発熱、悪寒、排尿時痛、全身のだるさなどが組み合わさり、抗菌薬の点滴や入院治療が必要になります。経直腸式では針が直腸壁を通るため、腸内細菌による感染と抗菌薬耐性への対策が必要です。

会陰式は感染を減らす利点があり、前向き試験をまとめた2024年のメタ解析でも、がん検出率を保ちながら感染リスクを抑える方向が示されました[5]。尿閉や血尿など、感染以外の合併症は両経路で起こります。

尿閉は、前立腺のむくみや出血により尿道が圧迫される状態で、膀胱カテーテルが必要になります。もともとの前立腺肥大、強い排尿症状、多数の穿刺が発生しやすさへ関わります。

09

病理結果に並ぶGrade Groupと腫瘍量

採取した組織は固定、薄切、染色を経て病理医が観察します。結果がまとまるまでの期間は施設によって異なり、多くは1〜2週間程度です。追加の免疫染色や専門病理医による確認が入ると、所要日数が延びます。

結果表には、各採取部位のがんの有無、Gleason score(組織パターンの合計)、それを5段階へまとめたGrade Group、組織内に占めるがんの長さや割合が記載されます。3+4と4+3は合計が同じ7でも主体となる組織パターンが異なり、Grade Group 2と3に分かれます。

該当する標本では、篩状構造、導管内進展、神経周囲浸潤も記載されます。生検結果はMRIやPSA、病期画像と組み合わされ、監視療法、手術、放射線治療などの選択へつながります。

10

まとめ

前立腺生検は、PSAやMRIで推定した病変から組織を採り、がんの有無とGrade Groupを確定する検査です。MRI標的生検と系統的生検は、疑わしい場所を狙う役割と、前立腺全体を補う役割を持ちます。会陰式は感染を抑えやすく、経直腸式も適切な抗菌薬対策のもとで行われています。検査中の痛みは局所麻酔で軽減され、血尿と血精液症は検査後に比較的よくみられる変化です。感染や尿閉の頻度は低いものの、発症時には抗菌薬投与やカテーテル留置を要します。病理結果では、治療方針へ直結する悪性度と腫瘍量まで確認できます。