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前立腺肥大症とは:症状・薬・手術をどう考えるか

前立腺の大きさ、尿道閉塞、症状、残尿の違いを解説します。α1遮断薬と5α還元酵素阻害薬の役割、手術を考える条件、経過観察の内容を扱います。

左右からの圧力で中央の通り道が狭くなる様子によって、前立腺肥大症を表した概念図
前立腺肥大症で起こりうる通り道への圧力を、左右対称の層と中央の隙間で表現しています。© Uro Care 医学編集部
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前立腺の大きさと、尿の通りを分けて評価します

前立腺の大きさだけで、症状の強さまで決まるのでしょうか?

加齢に伴う組織学的な前立腺肥大、画像で測る良性前立腺腫大、尿道抵抗が高まる膀胱出口部閉塞、本人が感じる下部尿路症状は、それぞれ異なる情報です。前立腺体積が大きくても尿流が保たれる人がいれば、小さくても膀胱内へ張り出す形や膀胱頸部の影響で強く閉塞する人もいます。

古典的研究でも、症状の強さと前立腺体積、尿流、残尿の相関は限定的でした[1]。夜間頻尿や急な尿意には夜間多尿、過活動膀胱、睡眠障害も関わります。診察では、現在の困り方、尿流、残尿、尿閉・感染・結石などの合併症、将来の進行リスクを別々に記録し、前立腺が各項目へどの程度寄与しているかを見ます。

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問診票、尿流、残尿は違う現象を測っています

国際前立腺症状スコアは、残尿感、頻尿、尿の途切れ、尿意切迫、尿勢低下、いきみ、夜間頻尿と生活への影響を点数化します。経過を比べる道具として便利です。尿流測定は最大尿流率、排尿量、曲線を示し、残尿測定は排尿後に膀胱内へ残った量を示します。

低い尿流率と多量残尿は閉塞を疑う所見ですが、膀胱収縮力が低い人にも現れます。排尿量が少ない検査は再測定します。尿検査、腎機能、直腸診、前立腺超音波を加え、血尿、感染、尿道狭窄、神経疾患を確認します。神経疾患や手術歴があり、閉塞解除後の改善を見通しにくい人では、圧尿流検査で膀胱内圧と尿流を同時に測ります。

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PSAと前立腺体積から、数年先の進行を見積もります

PSAは前立腺がん評価に用いるほか、良性前立腺組織の量とも関連します。前立腺炎、尿閉、尿路操作で上昇するため、採血条件を確認します。BPH患者の解析では、PSAや前立腺体積が高いほど、急性尿閉や手術へ進むリスクが高い傾向が報告されました[2]。

この情報は、現在の症状を早く軽くする薬を使うか、前立腺を縮小させて長期進行を抑える薬を加えるかに関わります。年齢、家族歴、直腸診も確認し、PSA高値が良性肥大の範囲に合うかを検討します。5α還元酵素阻害薬を開始した後はPSAが低下するため、開始前値、治療中の最低値、服薬期間を保存します。最低値からの再上昇は、改めて評価します。

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早く症状を変える薬と、進行を抑える薬があります

α1遮断薬は前立腺と膀胱頸部の平滑筋緊張を下げ、比較的早く尿勢と症状を改善します。立ちくらみ、血圧低下、射精障害、白内障手術時の虹彩緊張低下に注意します。前立腺体積を小さくする作用はありません。

5α還元酵素阻害薬は数か月かけて前立腺を縮小します。PLESS試験やMTOPS試験では、前立腺増大を持つ男性で急性尿閉や手術リスクが低下しました[3][4]。性欲、勃起、射精、乳房症状への影響を確認します。MTOPSではα遮断薬とフィナステリドの併用が臨床進行をより抑えました。薬剤数と有害事象も増えるため、前立腺体積と進行リスクが高い人に併用を考えます[5][6]。開始後は尿勢だけを尋ねず、立ちくらみ、性機能、残尿、PSAの変化を追います。短期の症状改善と、数年先の尿閉・手術回避を別々に評価すると、継続する薬の理由が明確になります。中止や変更の理由も診療録へ残します。

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尿意切迫や夜間頻尿が残る理由を調べます

尿の通りが改善しても、急な尿意、頻尿、夜間頻尿が残る人がいます。過活動膀胱が併存する場合は、残尿を確認したうえで抗コリン薬またはβ3作動薬を加えます。PDE5阻害薬は勃起機能と下部尿路症状の両方を扱う選択肢です。硝酸薬との併用はできません。

夜間の1回量が多い人では夜間多尿を調べます。3日間の排尿日誌で1回量と夜間尿量を確認し、夕方の浮腫、睡眠時無呼吸、利尿薬の服用時刻を見ます。便秘や習慣的な予防排尿も症状を増幅します。出口抵抗、膀胱の過敏、睡眠中の尿産生のうち、どの部分が治療後も残っているかを具体的に確認します。

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尿閉、感染、結石、腎障害は手術を考える所見です

反復する尿閉、閉塞に伴う尿路感染・膀胱結石・肉眼的血尿、水腎症や腎機能障害は、手術の優先度を高めます。薬を十分試しても生活障害が強い、薬の副作用が許容できない場合も手術を検討します。症状が軽く、残尿と腎機能が安定していれば、大きな前立腺でも経過観察を選べます。

経尿道的前立腺切除術、レーザー核出術・蒸散術、水蒸気治療などは、前立腺体積と形、抗凝固薬、麻酔リスク、射精温存希望、施設経験から選びます[7][8]。手術で尿道抵抗は下がりますが、膀胱収縮力低下や夜間多尿は残ります。術前の日誌、尿流、残尿を用いて、改善しやすい症状と残りやすい症状を説明します。

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経過観察にも、測定項目と期限があります

困り度が小さく、残尿が少なく、感染や腎機能への影響がない人は、生活調整と経過観察を選べます。就寝前へ集中した飲水、アルコール、便秘、感冒薬、長時間の排尿我慢を見直します。観察中は症状スコア、尿流、残尿、尿検査、PSA、前立腺体積を必要な間隔で比べます。

尿勢の急な低下、残尿増加、反復感染、肉眼的血尿、腎機能悪化、尿閉があれば方針を変更します。MTOPSとCombATの長期試験では、前立腺増大と進行リスクを持つ男性で併用療法が臨床進行を抑えました[5][6]。進行リスクが低い人は観察を続け、高い人は長期治療を検討するという差をつけます。

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生活調整が変えるのは、症状を増やす条件です

夕方以降の大量飲水とアルコールを控える、外出前のカフェインを調整する、便秘を治療する、寒い場所へ出る前に排尿計画を立てると、症状負担を軽くできます。二段排尿は軽度残尿へ試し、長く強くいきむ方法は避けます。感冒薬で尿勢が悪化した経験があれば、成分を確認します。

生活調整の目的は、膀胱への刺激と排尿条件を整えることです。前立腺体積と機械的閉塞は、薬または手術で扱います。尿流、残尿、腎機能が悪化している人には、薬や手術を検討します。臓器への影響がなく困り度が小さい人なら、生活調整を続けながら数値を追います。生活上の症状緩和と、尿閉・腎障害の予防を別の目標として扱います。

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良性肥大症の手術と、がんの手術は目的が違います

良性前立腺肥大症の手術は、尿道を圧迫する内側の腺腫を切除・核出し、尿の通りを改善します。前立腺がんの根治手術は、前立腺全体と精嚢を摘除して尿道を膀胱へつなぐ手術です。BPH手術で得た組織から偶発的ながんが見つかる例はありますが、BPH手術をがん予防として行うものではありません。

PSA高値や直腸診異常がある人では、BPH手術前にがん評価の順序を決めます。BPH手術後も残った前立腺組織からPSAが作られるため、PSAは0になりません。術後の新しい基準値を保存し、その後の上昇を評価します。同じ前立腺を扱う治療でも、目的、切除範囲、PSAの変化、起こり得る合併症が異なります。

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まとめ

前立腺肥大症では、前立腺体積、尿道閉塞、症状、残尿を別々に測ります。薬を続ける目的も、症状改善か進行予防かを明記します。α1遮断薬は比較的早い症状改善、5α還元酵素阻害薬は前立腺増大例の長期進行抑制に使います。尿の通りが良くなっても切迫感や夜間頻尿が残る人には、膀胱と夜間尿量を調べます。反復尿閉、感染、膀胱結石、水腎症、腎機能障害は手術を考える所見です。経過観察中も尿流、残尿、PSA、合併症を定期的に確認します。