赤から茶色へ薄くなる経過には、出血後の日数が表れます
射精した精液が赤い、ピンク色に見える、茶色い筋が混じる。血精液症は、痛みより見た瞬間の驚きが強い症状です。系統的レビューでは、多くは良性で自然軽快し、年齢、反復回数、血尿、排尿症状を組み合わせて追加評価の対象を選んでいます[1]。
色は出血からの時間をある程度反映します。鮮紅色は比較的新しい血液、茶褐色は酸化して時間が経った血液を示します。色の濃さは疾患の重症度を示す指標になりにくいです。
最初に記録するのは、何回続いたか、射精時痛、会陰部痛、排尿痛、肉眼的血尿、直前の前立腺生検や内視鏡です。色だけで原因を決めず、症状の組み合わせと発症からの経過を評価します。
血精液症では、1回目の射精で赤く見え、2回目以降に茶色や薄い色へ変わります。これは出血が止まった後も、精嚢や前立腺周囲に残った血液成分が精液へ混じり、時間をかけて外へ出ていくためと考えられています。
そのため、色の変化を見る時には、いつ気づいたか、何回続いたか、同じ色が濃く残るのか、薄くなっているのかを分けて記録すると分かりやすくなります。精液の量、粘り気、射精時痛、射精後の会陰部痛も判断に使います。
また、禁欲期間が長いと精嚢内の分泌液が長くたまり、古い血液が目立ちます。反対に、頻回の射精や強い刺激で一時的な粘膜出血が起こります。性行為そのものを原因と決めつけるより、前後の尿の色、排尿症状、発熱、前立腺や精嚢の画像所見と合わせて読む方が、症状の流れをつかみやすくなります。
血液は前立腺・精嚢・射精管周囲から混じります
射出される液体は主に精嚢液と前立腺液からなり、精子が占める体積は小さいです。そのため、血精液症では精巣そのものより、精嚢、前立腺、射精管、尿道周囲が出血源として考えられる事が多いと考えられています[1][2]。
精嚢は前立腺の後ろにあり、射精時に精液の大部分を送り出します。炎症、うっ血、結石、嚢胞、射精管の通過障害があると、血液が精液へ混じります。前立腺では炎症、石灰化、前立腺肥大、医療手技後の変化などが背景になります。
血精液症の多くは良性の経過をたどります。年齢が高く、再発に血尿やPSA高値が重なる時は、前立腺や精嚢の腫瘍性病変も鑑別に入ります[2][3]。
2025年の多施設研究でも、炎症性・医原性・特発性など原因は複数に分かれ、単一の検査で全例を説明できないことが示されました[7]。
前立腺生検後の出血は、手技からの日数で評価します
前立腺生検、前立腺手術、尿道や膀胱の内視鏡操作の後には、精液へ血が混じります。前立腺や精嚢の近くを針や器具が通るため、尿や精液に血液成分が混じりやすくなります。
この場合、血精液症は医療手技後の変化として説明されることが多く、自然に起こった血精液症とは評価方法が変わります。色が赤から茶色へ移り、量が減っていく流れなら、残った血液が時間をかけて排出されている可能性も考慮します。
手技から時間を置いて鮮血が新たに増え、発熱、強い排尿痛、血尿まで重なる時は、感染や別の出血源を調べます。最初に医療手技の前後かを確認すると、自然発症の出血と区別しやすくなります。
排尿痛や会陰部痛が伴えば炎症の検査を加えます
血精液症の原因として多いのが、前立腺炎や精嚢炎などの炎症性変化です。システマティックレビューでは単独発症が最多で、併発症状には排尿痛、頻尿、血尿、精巣周囲の痛みがありました[3]。
会陰部の重さ、射精時痛、尿道の違和感がそろえば、前立腺炎・精嚢炎を優先して調べます。性感染症による尿道炎が背景にあると、尿道分泌物や排尿開始時のしみる感覚が加わります。
炎症が疑われる時は、尿検査、尿培養、性感染症の核酸増幅検査、前立腺の触診所見などを合わせます。精液の色だけでは炎症性か構造性かを判定しにくく、症状の組み合わせを最初に確認します。
50代以降の反復例ではPSAと血尿を確認します
30代や40代で1回だけ色が変わり、痛みや血尿がなく、その後同じ変化が続かない場合は、炎症や一時的な出血として扱われる事が多いようです。50代以降で血精液症を繰り返し、血尿、PSA高値、精巣のしこり、体重減少が加われば、腫瘍性病変を含めて検査します[2][3]。
この違いは、若い人では良性の炎症や一時的変化が多く、年齢が上がるほど前立腺がんや精嚢腫瘍を含む病変を念頭に置くためです。病名の評価には、年齢と他の検査結果も使います。
色が茶色へ変わりながら薄くなる経過は、古い血液が少しずつ排出されている可能性を示します。反対に、鮮血が繰り返し混じる、血尿も出る、痛みが強いという組み合わせでは、前立腺・精嚢以外の尿路も含めた視点が必要です。
実臨床のリスク層別化研究では、年齢、反復、血尿、PSAを組み合わせて追加評価を選び、血精液症単独の重みは低く設定しました[8]。
超音波とMRIは、精嚢・前立腺の異なる情報を示します
血精液症の検査では、尿検査で血尿や白血球を確認し、必要に応じてPSA、直腸診、超音波、MRIが組み合わされます。経直腸超音波は前立腺、精嚢、射精管周囲を観察でき、血精液症の患者で精嚢拡張、結石、嚢胞、前立腺石灰化などを捉える報告があります[4][5]。
MRIは、精嚢の内部、出血の古さ、嚢胞性病変、前立腺内の病変を詳しく見たい場面で使われます。特に症状が長く続く、超音波で説明がつきにくい、PSAや直腸診の情報が気になる場合には、画像検査の役割が増えます[2]。
また、前立腺生検の後には血精液症が起こりやすく、数週間から数か月続きます。医療手技後の変化か、自然に起きた症状かで、検査の意味合いが変わります。
原因が判明した時に、治療内容が具体化します
血精液症の治療は、原因が見つかるかどうかで変わります。細菌性前立腺炎や性感染症が背景にあれば抗菌薬、炎症が中心なら抗炎症薬や生活上の刺激の調整、射精管や精嚢の結石・嚢胞が関係する場合には内視鏡的な治療が検討されます[2][3][6]。
原因が明確に見つからず他の所見も乏しい時は、色が時間とともに薄くなるか経過を追います。精液は射精のたびに分泌物が入れ替わるため、過去の出血が数回に分けて見えます。
評価では、血液が見えた時点に加え、精嚢・前立腺の構造、色の推移、反復回数、年齢を並べて確認します。見た目の強さと背景疾患の重さは必ずしも比例しないため、経過の記録が理解を助けます。
パートナーへは色の変化と感染の有無を分けて伝えます
血精液症は本人に加えて、パートナーが先に気づく人もいます。性感染症を連想しやすい症状ですが、実際には前立腺や精嚢の炎症、一時的な出血、医療手技後の変化など幅広い背景があります。
患者には、血液の混入部位として精嚢・前立腺が多いこと、茶色は時間のたった血液を示すこと、尿の色と排尿症状も同時に確認することを伝えます。
また、血液が見えた時期、最後の射精からの間隔、性交時痛、避妊具の使用、尿道分泌物の有無を記録すると、性行為そのものによる刺激か、前立腺・精嚢側の変化かを考える材料になります。
まとめ
血精液症の多くは前立腺・精嚢周囲の一時的な出血で、赤から茶色へ薄くなる経過をたどります。評価で確認するのは、発症回数、年齢、射精時痛や排尿痛、肉眼的血尿、PSA、直前の生検・内視鏡です。反復例や50代以降、血尿・PSA高値が重なる時は、尿検査、直腸診、経直腸超音波、MRIを組み合わせます。感染、結石、嚢胞などが判明した時は、その原因に沿って治療します。
参考資料
- [1] Kumar P, et al. Haematospermia - a systematic review. Annals of the Royal College of Surgeons of England. 2006. ↗
- [2] Suh Y, et al. Etiologic classification, evaluation, and management of hematospermia. Transl Androl Urol. 2017. ↗
- [3] Madhushankha M, et al. Clinical characteristics, etiology, management and outcome of hematospermia: a systematic review. Am J Clin Exp Urol. 2021. ↗
- [4] Razek AA, et al. Transrectal ultrasound in patients with hematospermia. J Ultrasound. 2010. ↗
- [5] Raviv G, et al. The added value of transrectal ultrasound to clinical evaluation of hematospermia. J Androl. 2013. ↗
- [6] Drury RH, et al. Hematospermia: Etiology, Diagnosis, Treatment, and Sexual Health. Curr Sex Health Rep. 2022. ↗
- [7] Gönültaş S, et al. Etiology of Hematospermia in Turkish Men: Multicentric Study. Balkan medical journal. 2025. ↗
- [8] Pozzi E, et al. Haemospermia in the Real- Life Setting: A New High-Risk Stratification. Urology. 2023. ↗



