突然の片側陰嚢痛は、直ちに精巣捻転を疑います
片方の睾丸が突然強く痛み、どうすればよいか迷っていませんか? 突然の強い片側陰嚢痛では、直ちに精巣捻転を疑い、緊急手術に対応できる施設での評価が必要です。
精巣捻転は、精索がねじれて精巣への血流が途絶える病気です。突然の強い片側陰嚢痛、急速な腫れ、悪心・嘔吐、高い位置または横向きの精巣が手掛かりです。思春期に多くみられますが、新生児から成人まで起こり、運動後にも睡眠中にも発症します。
陰嚢を持ち上げたときの痛みの変化、精巣挙筋反射、発熱、排尿痛には、捻転と感染で所見の重なりがあります。最初から急激だったか、過去に短い同様の痛みがあったか、何時に始まったかを確認します。疑いが高ければ、画像検査より手術準備を優先します[7][8]。
発症時刻は、就寝・覚醒・嘔吐から推定します
血流が途絶えた時間が長いほど、精巣壊死と摘除の確率が上がります。系統的レビューでは、発症から手術までの時間と精巣生存の関係が示されました[1][2]。一般に6時間以内の解除が最も望ましいとされます。6時間を超えた人にも温存可能性が残るため、手術評価を続けます。ねじれが360度か720度以上かによっても虚血の進み方が異なります[3]。
痛みが睡眠中に始まり、正確な時刻が分からない場合は、眠る前に無症状だった時刻、目覚めた時刻、嘔吐が始まった時刻を聞きます。時間は予後を説明し、搬送と手術準備を急ぐための情報です。来院が遅い人にも、残る温存可能性を考えながら最短で手術評価を進めます。
精巣上体炎との区別には、発症の速さを重視します
精巣上体炎は数時間から数日かけて増悪し、排尿痛、頻尿、尿道分泌物、発熱を伴う人がいます。尿検査で白血球や細菌が見つかる場合もあります。小児の急性陰嚢症研究では年齢や症状に差があるものの、両者の所見は重なりました[4][5]。
感染を想定して抗菌薬を処方し、翌日まで待つ方法は、精巣捻転であれば温存時間を失います。捻転を除外した精巣上体炎には、年齢、性接触、尿路異常に合う病原体検査と抗菌薬を選びます[6]。鼠径ヘルニア嵌頓、精巣付属器捻転、外傷、腫瘍内出血、IgA血管炎も鑑別です。急激な発症と悪心・嘔吐がある人は、捻転の評価を先に行います。
ドプラ超音波では、左右の血流と精索を見ます
カラードプラ超音波では左右の精巣血流、精巣実質、精巣上体、陰嚢水腫、精索の渦巻き所見を評価します。完全捻転では血流消失が典型です。発症早期、部分捻転、自然に戻りかけた間欠性捻転では血流が残る場合があります。小児の小さな精巣や検者の経験も精度へ影響します。
臨床的な疑いが高い人は、超音波で血流が見えても手術探索を選ぶ場合があります。疑いが中等度の人には、迅速な超音波が不要な手術を減らす助けになります。TWISTスコアは腫脹、硬い精巣、挙筋反射、悪心・嘔吐、高位精巣を組み合わせます。施設や年齢で性能が変わるため、スコアと診察を一緒に使います[8]。
痛みが消えた発作にも、固定術を相談します
強い片側陰嚢痛が突然始まり、数分から数時間で完全に消える発作は、精索のねじれが自然に戻る間欠性精巣捻転の可能性があります。無症状時の超音波は正常に見える人もいます。過去に同様の発作があり、精巣が横向き、家族歴があると疑いが高まります。
次の発作ではねじれが戻らず、完全捻転となる危険があります。発作中は直ちに評価し、発作後も早めに固定術を相談します。慢性的な鈍痛には精索静脈瘤、鼠径ヘルニア、骨盤底・神経痛も含まれます。開始・終了時刻、左右、悪心、精巣の位置、活動内容を症状日誌へ残します。
手術では血流を戻し、通常は両側を固定します
陰嚢を切開して精索のねじれを戻し、血流と色調の回復を評価します。温存可能なら精巣を陰嚢壁へ固定します。反対側にも同じ解剖学的素因がある人が多いため、通常は対側精巣も固定します。壊死が明らかで回復しない場合は摘除が必要です。
徒手整復は、手術準備中に血流回復を試みる一時的な方法です。ねじれの方向には例外があり、痛みが軽くなる方向へ慎重に行います。痛みが軽快した後も残存捻転や再捻転の可能性があるため、手術で確認して固定します。鎮痛後の血流は、診察、超音波、手術所見で確かめます。
温存した精巣は、数か月後の体積まで追います
手術時に色調が戻り温存できても、数か月後に精巣が萎縮する人がいます。思春期前後では超音波で左右の体積を比べ、必要に応じてテストステロン、LH・FSH、精液検査を行います。反対側の精巣が健常なら、多くの人は十分なホルモンと生殖機能を保ちます。
摘除が必要だった人には、成長後の整容目的で精巣プロテーゼを検討できます。心理的影響と将来の妊娠希望も確認します。両側固定後に新しい強い陰嚢痛が出た場合も、再捻転を含めて評価します。創部の発赤、発熱、急な腫脹も早めに診察します。退院時の温存可否に加え、体積と機能の変化を追跡します。
腹痛と嘔吐だけでも、陰嚢を診察します
年齢によって急性陰嚢症の頻度は変わります。新生児捻転は出生前後に起き、痛みを訴えない硬い陰嚢腫瘤として見つかります。学童には精巣付属器捻転、思春期には精巣捻転が多く、成人には精巣上体炎が増えます。それでも成人の精巣捻転は起こります。
小児は陰嚢痛をうまく説明できず、下腹部痛や嘔吐だけを訴える場合があります。急な下腹部痛と嘔吐を診たときは、年齢にかかわらず陰嚢を確認します。高齢者では鼠径ヘルニア嵌頓、腫瘍、感染も調べます。年齢にかかわらず、急な発症、高位精巣、悪心という所見を重く見ます。
鎮痛、絶食、麻酔準備を同時に進めます
強い痛みと嘔吐には静脈路を確保し、鎮痛薬と制吐薬を使います。鎮痛と診断、手術準備は並行して進めます。手術の可能性が高いため飲食を止め、最終飲食時刻、アレルギー、抗凝固薬、既往手術を確認します。
診察、超音波、鎮痛、麻酔準備を順番に1つずつ行うと、虚血時間が長くなります。必要な作業を並行して進めます。徒手整復後に痛みが軽くなった人も、超音波または手術で残存捻転を確認します。家族への説明は、手術室準備を止めない範囲で行います。
超音波は、手術へ直結する場所で行います
画像が必要な中間リスク例では、経験ある検者が迅速に超音波を行い、結果を直ちに外科担当へ共有します。画像検査だけを目的とした別施設への転送や、長い待機が手術を遅らせる場合は、臨床所見を優先します。
依頼時には発症時刻、左右、精巣位置、挙筋反射、悪心・嘔吐を伝えます。血流の有無に加え、精索の渦巻き、左右差、精巣実質を確認します。検査を行う価値は診断精度に加え、虚血時間を増やさず手術判断へ結び付けられるかで決まります。
まとめ
突然の片側陰嚢痛、腫脹、悪心・嘔吐には精巣捻転を疑い、直ちに評価します。温存率を左右するのは、発症から解除までの時間とねじれの程度です。ドプラ超音波は左右の血流と精索を確認する検査ですが、部分・間欠性捻転では血流が残ります。臨床的な疑いが高い人には画像で手術を遅らせません。手術の基本は、ねじれの解除と両側固定です。自然に消えた発作にも固定術を相談し、温存後は精巣体積と機能を追跡します。発症時刻が曖昧でも、画像待ちより搬送と手術準備を優先する臨床判断は変わりません。最後に無症状だった時刻を記録し、搬送先へ共有します。搬送先の受け入れ準備も同時に始めます。
参考資料
- [1] Mellick LB, et al. A systematic review of testicle survival time after a torsion event. Pediatr Emerg Care. 2019. ↗
- [2] MacDonald C, et al. A systematic review and meta-analysis of testicular loss after torsion. 2018. ↗
- [3] Howe AS, et al. Degree of twisting and duration of symptoms are prognostic factors in testicular torsion. Transl Androl Urol. 2017. ↗
- [4] Ramachandra P, et al. Factors influencing rate of testicular salvage in acute testicular torsion at a tertiary pediatric center. West J Emerg Med. 2015. ↗
- [5] Tanaka K, et al. Acute scrotum and testicular torsion in children. 2020. ↗
- [6] Kadish HA, et al. Pediatric epididymitis and testicular torsion: retrospective review. 1998. ↗
- [7] EAU Guidelines on Paediatric Urology. 2026. ↗
- [8] Barbosa JA, et al. Development and initial validation of a scoring system to diagnose testicular torsion in children. J Urol. 2013. ↗



