破裂音、痛み、急な萎えが続く外傷
最も特徴的な経過は、勃起中に「パキッ」「ポキッ」という音を感じ、強い痛みとともに陰茎が急に萎えることです。その後、短時間で腫れと紫色の内出血が広がります[1][2]。
白膜の裂け目から一側へ出血すると、陰茎は反対側へ曲がり、急速な腫脹と皮下出血が現れます。出血が陰茎の筋膜を越えると、陰嚢や下腹部まで皮下出血が広がります。
音が不明瞭な患者や、痛みが軽い患者もいます。音がしても白膜が裂けておらず、表在静脈の損傷や皮下出血だけの「偽陰茎折症」も存在します。破裂音、急な萎縮、腫脹の経過と触診所見が診断を支えます。
破裂音、急な萎え、急速な腫脹がそろう時は、痛みが一度軽くなっても当日中に緊急評価が必要です。尿道口出血、血尿、排尿不能を伴えば尿道損傷を疑い、画像検査より先に緊急評価を進めます。
裂けるのは勃起時の白膜
陰茎折症という名前には「骨折」の文字が入りますが、実際に傷つくのは陰茎海綿体を包む白膜です。勃起時に血液で膨らむ左右の陰茎海綿体を包む、白膜という丈夫な膜が裂けた状態です。
平常時の白膜は厚く柔軟性がありますが、勃起すると薄く伸ばされ、内圧が高くなります。そこへ陰茎を急に曲げる力が加わると、白膜が圧に耐えられず破れ、海綿体内の血液が周囲へ広がります。
この外傷では、陰茎の形が一時的に変わり、白膜の裂け目から周囲へ出血します。白膜の瘢痕は、勃起時の曲がり、痛み、勃起機能低下へつながります。
性交時の衝突と陰茎を曲げる動作
性行為中に陰茎が腟や会陰部から外れ、相手の骨盤へ強く当たって曲がることが代表的な原因です。勃起した陰茎へ軸と異なる方向の力が急に加わると、白膜が裂けます。
地域によっては、勃起を早くおさめるため陰茎を手で曲げる動作、寝返り、自慰行為などが多い原因として報告されています[5]。発生状況は文化や生活習慣によって差があります。
外傷の強さは性交の激しさだけで決まらず、陰茎が外れた瞬間に加わる予期しない角度が関わります。飲酒や暗い環境では動きの調整が遅れ、外傷リスクが上がります。
典型例は問診と診察で診断が進む
AUAとEAUの外傷ガイドラインは、勃起中の破裂音、急な萎縮、痛み、腫れ、内出血がそろう場合、陰茎折症を臨床的に強く疑うとしています[1][2]。
診察では、血腫の広がり、陰茎の曲がり、白膜の裂け目を示す硬さの途切れ、尿道口の出血を確かめます。典型像では画像検査を待たず、手術所見で裂け目を確認する流れがあります。
音や急な萎えがなく、腫れだけが目立つ場合には、背側静脈損傷、皮下血腫、陰茎靱帯の損傷などが候補になります。診断が不確かな時に画像を加えることで、不必要な切開を避け、裂け目の位置を手術前に把握できます。
尿道損傷を示す出血と排尿障害
白膜の裂け目が陰茎下面や両側の海綿体へ及ぶと、その間を走る尿道も損傷します。尿道口から血が出る、血尿、尿が出にくい、尿閉といった変化が手掛かりです[1][2]。
系統的レビューでは、陰茎折症に伴う尿道損傷の頻度は約3.9%でしたが、報告地域や外傷の仕組みにより幅があります[6]。尿道口出血がなくても部分損傷が隠れる例があるため、外傷の位置と排尿状況が合わせて見られます。
尿道損傷が疑われる場合には、逆行性尿道造影、尿道鏡、手術中の確認が使われます。裂けた尿道が見つかれば、白膜の修復と同時に尿道を縫合し、治癒期間中はカテーテルで尿を流します。
超音波とMRIを使う場面
超音波では、白膜の連続性、海綿体周囲の血腫、血流を確かめます。検査を短時間で行えますが、大きな血腫、痛み、陰茎の位置によって裂け目が見えにくくなります。
MRIは軟部組織のコントラストが高く、白膜の断裂部位と大きさ、血腫の範囲を詳しく描きます。診断精度を比較した研究では、MRIは陰茎折症の確認に高い感度を示し、超音波は特異度が高い結果でした[4]。
典型的な経過と診察所見がそろえば画像を待たずに治療を進めます。超音波やMRIは診断が不確かな患者で裂け目の位置を補います。夜間や施設条件によってMRIまでの時間が長くなる場合には、画像を待つ利益と手術の遅れを比べる必要があります。
血腫除去と白膜縫合
手術では陰茎の皮膚を切開し、たまった血液を除いて白膜の裂け目を探します。裂けた縁を確認し、吸収される糸などで海綿体が閉じるよう縫合します。尿道損傷があれば同じ手術で修復します。
切開法には、包皮に近い位置を一周して皮膚をめくる方法と、血腫や画像から予測した裂け目の近くを小さく切る方法があります。裂け目の位置、腫れの範囲、尿道損傷の可能性で選ばれます。
外見上の腫れが大きくても、白膜の裂け目は数cm以下のことが多くあります。手術では血腫を除去し、勃起時の圧を保つ白膜を元の形へ縫合して、曲がりと勃起障害につながる瘢痕を抑えます。
手術が守る形態と勃起機能
過去には、冷却、圧迫、勃起を抑える薬で経過を見る保存的治療も行われました。しかし、裂け目を閉じずに血腫が治ると、瘢痕、陰茎の曲がり、痛い勃起、勃起障害が残りやすくなります。
3,000例以上を含むメタ解析では、外科的修復は保存的治療と比べて、勃起障害、陰茎弯曲、痛みを伴う勃起を減らしました[3]。この結果から、AUAとEAUは陰茎折症の外科的修復を標準に位置付けています[1][2]。
手術の時期は早期が一般的ですが、数時間の差と長期機能の関係を調べた研究にはばらつきがあります。2024年のレビューでは早期手術を支持する研究が多く、24時間以内の範囲では数時間の差による長期成績の違いが明瞭でない報告もありました[5]。診断後は全身状態と手術室の準備を整え、白膜を修復します。
17年間の比較コホートでは保存的治療群で弯曲や勃起障害が多く、外科的修復を支持しました[7]。即時修復の症例集積でも機能成績は良好でした[8]。どちらも無作為試験ではないため効果量には限界がありますが、メタ解析と一貫する方向です。
術後の腫れ、性交再開、機能回復
術後の皮下出血と腫れは、数週間かけて色と硬さが変化しながら軽くなります。創部の痛みが落ち着いても、勃起時の違和感や曲がりは、組織が柔らかくなるまでの時間を含めて評価されます。
尿道損傷がなければカテーテル期間は比較的短く、尿道修復を伴う場合は治癒を確認するまで長くなります。性行為の再開時期は、創部と白膜の治癒、痛み、勃起時の状態を確認して決められます。
外傷の状況を話す恥ずかしさや、将来の勃起への不安は、腫れの程度とは別の負担です。外科的修復後の多くは良好な性機能を得ますが、残る曲がり、硬結、勃起障害は術後評価の対象になります。
血腫の広さと裂け目の大きさは別
白膜の裂け目が比較的小さくても、海綿体内の圧が高い状態で出血すると、皮下の血腫は陰茎全体へ急速に広がります。陰茎を包むBuck筋膜が保たれていれば腫れは陰茎内へ限られやすく、筋膜まで破れると陰嚢、会陰部、下腹部へ紫色の変化が広がります[1][2]。
血腫の広さと白膜裂傷の長さは一致せず、腫れが限局した例にも白膜断裂が含まれます。血腫の範囲は、裂け目の位置と筋膜の状態を考える手掛かりです。
また、腫れによって裂け目を触れにくい場合には、超音波やMRIで位置を補い、切開範囲を決めます。外観の強さだけで損傷の深さを判断しにくい点が、陰茎折症の診断で画像が役立つ理由の1つです。
まとめ
陰茎折症は、勃起した陰茎へ急に曲げる力が加わり、陰茎海綿体を包む白膜が裂ける外傷です。典型的には破裂音、痛み、急な萎え、腫れと内出血が続きます。診断は経過と診察が中心で、不確かな場合には超音波やMRIが裂け目を映します。尿道口出血、血尿、排尿困難は尿道損傷の手掛かりです。手術では血腫を除き、白膜と必要に応じて尿道を修復します。外科的修復は保存的治療より、勃起障害、曲がり、痛い勃起を減らすことがメタ解析で示されています。
参考資料
- [1] Urotrauma Guideline: Penile Fracture. American Urological Association. ↗
- [2] EAU Guidelines on Urological Trauma. Urogenital Trauma Guidelines. 2026. ↗
- [3] Amer T, et al. Penile Fracture: A Meta-analysis. Urol Int. 2016. ↗
- [4] Spiesecke P, et al. Diagnostic Performance of MRI and Ultrasound in Suspicion of Penile Fracture. Transl Androl Urol. 2022. ↗
- [5] Bernstein AP, et al. Optimal Timing of Surgical Intervention for Penile Fracture: A Systematic Review. 2024. ↗
- [6] Shebl SE, et al. Presentation and Outcomes of Penile Fracture With Associated Urethral Injury: Systematic Review. 2023. ↗
- [7] Yapanoglu T, et al. Seventeen Years' Experience of Penile Fracture: Conservative Versus Surgical Treatment. J Sex Med. 2009. ↗
- [8] Mazaris EM, et al. Penile Fractures: Immediate Surgical Approach With a Midline Ventral Incision. 2009. ↗



