Uro Care泌尿器の健康ポータル

発熱と腰の痛みが同時に出る:腎盂腎炎で起こること

発熱、悪寒、脇腹や腰の痛みを起こす腎盂腎炎について、膀胱炎との違い、尿培養、画像検査、結石による閉塞を解説します。

青い流路から対になる器の一方へ小さな赤銅色の点が上昇し、上部の温かな光へつながることで腎盂腎炎の感染と発熱を表した概念図
腎臓や感染巣を描かず、尿路を上向きに進む変化と全身の熱を、流路、点、温かな光で表現しています。© Uro Care 医学編集部
01

膀胱症状に発熱・悪寒・側腹部痛が加わります

排尿時にしみる、トイレが近いという症状に、38℃を超える発熱、震えるような悪寒、背中から脇腹の痛みが重なる。腎盂腎炎は、尿路感染が腎盂と腎実質へ及び、全身の炎症反応を起こした状態です。

膀胱炎では頻尿、尿意切迫感、排尿痛が中心で、高熱や強い倦怠感は腎盂腎炎を疑う所見です。EAUは、発熱、悪寒、血圧低下、頻脈、肋骨脊柱角の痛みを伴う尿路感染を全身性尿路感染として扱い、腎盂腎炎を代表例に挙げています[1]。

尿路症状が乏しく、発熱と吐き気から始まる患者もいます。高齢者では食欲低下、意識の変化、活動性低下が前面に出て、腰痛を伴わない患者もいます。

02

細菌は膀胱から尿管を上がり、腎盂へ達します

腎盂腎炎の多くは上行性感染で、腸内に由来する大腸菌などが尿道から膀胱へ入り、尿管を通って腎臓へ達します。女性では尿道が短く、膀胱炎から腎盂腎炎へ進む経路が起こりやすいと考えられています。

尿が一方向へ流れ、膀胱が十分に空になる状態は細菌を洗い流す働きを持ちます。尿管結石、水腎症、前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿管ステントなどで尿の流れが滞ると、細菌が増えやすくなります。

糖尿病、妊娠、免疫抑制、片腎、腎移植なども病状の見方へ影響します。同じ大腸菌による感染でも、尿の流れと全身状態によって、内服治療で落ち着く経過から敗血症へ進む経過まで幅が生まれます。

03

尿培養で原因菌と薬剤感受性を確認します

尿検査では白血球、細菌、潜血、亜硝酸塩などを確認し、尿培養で原因菌と抗菌薬への感受性を調べます。全身性尿路感染では、抗菌薬開始前の尿を培養へ回すことが基本とされています[1]。

初期治療は、地域の耐性率、過去の培養結果、最近使った抗菌薬、医療施設との接触歴を基に選ばれます。その後、培養結果が判明すると、広く細菌を覆う薬から原因菌へ絞った薬へ変更できます。

血液培養は、高熱、敗血症所見、重い基礎疾患がある場面で意味が増えます。尿と血液から同じ菌が見つかりますが、安定した女性の腎盂腎炎では血液培養が治療変更へ結び付く割合が低いという研究もあります。検査の数より、得られた菌と感受性を治療へ反映することが中心です。

04

点滴治療は血圧、意識、嘔吐、併存症から決めます

水分と内服薬を保てる、血圧と意識が安定している、尿路閉塞が考えにくい場合には、内服抗菌薬を中心に治療が組まれます。嘔吐で内服できない、脱水、低血圧、呼吸数増加、意識変化、妊娠、重い併存症がある時は、点滴治療と全身管理を選びます。

点滴から内服への切り替えは、解熱の傾向、食事と水分、血圧、炎症反応、培養結果を見ながら行われます。薬の投与経路は病名だけで固定されるより、同じ患者の経過に合わせて変わります。

男性の発熱性尿路感染では、前立腺が感染源に含まれる場合があり、女性の単純な腎盂腎炎より長い治療期間が選ばれます。妊娠中は使える薬と画像検査に違いがあり、患者背景が治療設計へ直結します。

複雑性尿路感染症を含む無作為化試験では新規βラクタマーゼ阻害薬併用療法も検討されていますが、個々の選択は培養、腎機能、重症度、国内承認状況で決まります[10]。

05

治療期間は薬剤と尿路の構造で設定します

女性の急性腎盂腎炎を対象にした無作為化試験では、シプロフロキサシン7日間が14日間と同程度の治療成績を示しました[3]。別の試験でも、7日間のシプロフロキサシンが14日間のST合剤より高い治癒率を示しています[2]。

複数の無作為化試験をまとめた解析では、選ばれた患者における7日以下の治療は長期治療と同等でしたが、尿路の構造異常を多く含む研究では短期治療の細菌学的失敗が増える傾向がありました[4]。

ここから分かるのは、「腎盂腎炎なら何日」という単一の答えより、抗菌薬の種類、菌の感受性、男性か女性か、閉塞やカテーテルがあるか、治療反応がどうかで期間が決まるということです。短期治療は薬剤負担を減らします。尿路通過障害があれば、治療期間を別に設定します。

2025年のリビング系統的レビューでも短期療法と長期療法が比較され、感染源の制御と患者背景を無視して日数だけを一律化できないことが確認されました[7]。

06

結石による閉塞は画像で確認し、早期に減圧します

尿管結石が尿の流れを塞ぎ、その上流に感染尿がたまる状態は閉塞性腎盂腎炎です。腎盂内の圧が上がり、細菌や炎症物質が血液へ入りやすくなるため、短時間で敗血症性ショックへ進む可能性も考慮します。

日本の研究では、結石による急性腎盂腎炎で、血小板低下、低アルブミン、糖尿病などが敗血症性ショックと関連しました[5]。痛みが強いかどうかだけで重症度が決まるより、血圧、意識、呼吸、尿量、血液検査が重要になります。

EAU尿路結石ガイドラインは、感染徴候を伴う閉塞腎を泌尿器科的緊急状態とし、尿管ステントまたは腎瘻で尿を逃がす減圧を強く推奨しています[6]。この場面では、石をすぐ砕くことより、まず感染尿の出口を作ることが治療の中心です。

閉塞性結石を伴う感染で減圧が遅れると死亡リスクが上がる大規模解析があり[8]、前向き研究でも減圧後の敗血症性ショックを予測する因子が検討されています[9]。発熱、悪寒、側腹部痛に血圧低下や意識変化が加われば、直ちに救急対応が必要です。

典型的な症状があり、治療反応が良い若い女性では、CTを省いて経過をみられます。画像の役割が増えるのは、結石歴、片腎、腎機能悪化、尿量低下、強い片側痛、重い全身状態、治療開始後も発熱が続くといった場面です。

超音波は放射線被曝を伴わず、水腎症、膀胱の残尿、大きな結石を確認できます。CTでは尿管結石、膿瘍、腎周囲炎症、気腫性腎盂腎炎まで詳しく描出できます。

画像で重要なのは、腎臓が炎症を起こしているという確認に加えて、抗菌薬が効くために尿が流れる環境になっているかを見ることです。閉塞があれば減圧、膿瘍があればドレナージというように、画像が治療の内容を変えます。

07

解熱後も続く症状では膿瘍と耐性菌を見直します

抗菌薬が奏効すると、発熱と全身倦怠感は数日で改善します。腰の重さや疲労感は、解熱後もしばらく残ります。解熱だけで細菌が完全に消えたと判断するより、培養結果と処方された期間を合わせて経過を見ます。

腎盂腎炎を繰り返す場合には、結石、残尿、膀胱尿管逆流、尿路狭窄、カテーテル、閉経後の尿路変化などが背景にないかを確認します。毎回違う菌が見つかる場合と、同じ菌が短期間で戻る場合でも意味が異なります。

また、発熱性尿路感染後の画像で水腎症が残れば、感染が落ち着いた後に尿の通過障害を調べます。急性期の抗菌薬治療と、再発を生む構造の評価は、同じ病気の中でも別の時間に行われる工程です。

08

妊娠中と男性では合併する病態まで調べます

妊娠中は子宮による尿管の圧迫とホルモン変化で尿が停滞しやすく、腎盂腎炎が早産や母体の呼吸状態へ影響します。使える抗菌薬と画像検査にも制約があり、一般的な非妊娠女性とは別の管理が組まれます[1]。

男性の発熱性尿路感染では、腎盂腎炎に加えて急性細菌性前立腺炎が同時に関わります。会陰部痛、尿の勢い低下、尿閉に近い排尿困難が重なると、感染源の見方と治療期間が変わります。

また、糖尿病では重症化や耐性菌の可能性が高まり、気腫性腎盂腎炎のように腎実質内へガスを作る感染も話題になります。病名が同じでも、妊娠、性別、糖代謝、尿路構造によって検査と治療の密度が変わります。

09

まとめ

腎盂腎炎では発熱、悪寒、倦怠感、側腹部痛が現れ、尿培養で原因菌と薬剤感受性を確認します。血圧低下、意識変化、嘔吐、妊娠、重い併存症は点滴治療と全身管理を選ぶ要素です。尿管結石などで尿がせき止められた感染は、抗菌薬に加えてステントや腎瘻による減圧が必要です。治療開始後も発熱が続く時は、閉塞、膿瘍、耐性菌を画像と培養で見直します。回復後は結石、残尿、前立腺、糖尿病など再発条件を確認します。

参考資料