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腟から何か下がる感じがする:骨盤臓器脱とは

骨盤臓器脱で腟のふくらみ、排尿困難、尿漏れ、排便困難が生じる仕組みを説明し、骨盤底筋訓練、ペッサリー、手術の選び方を解説します。

女性の横顔のそばで重なる紙の曲線が小さな球を支え、骨盤臓器脱に関わる支持構造の変化を表した概念図
骨盤内の臓器を描かず、下から支える層と少し位置が変わる球によって、支えの変化を表現しています。© Uro Care 医学編集部
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立ち仕事の後に強くなる腟のふくらみは、脱の典型症状です

朝は気にならず、買い物や立ち仕事の後に腟口へふくらみを感じ、横になると軽くなる経過は骨盤臓器脱に合います。膀胱、子宮、直腸、腟の頂部は骨盤底筋、筋膜、靱帯で支えられています。出産、加齢、閉経後の組織変化、肥満、慢性咳嗽、便秘によるいきみが重なると支持組織が伸びます[1]。

診察時には、1日のどの時間、どの動作で処女膜を越える感覚があるかを確認します。子宮摘出後も腟頂部の支持が弱ければ再発し、10年追跡では再評価・再手術が一定数に生じました[7]。現在下がっている壁と頂部支持をともに評価します。

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前壁、頂部、後壁のどこが下がるかを診察します

腟前壁を膀胱が押す状態が膀胱瘤、子宮頸部が下がる状態が子宮脱、子宮摘出後などに腟の奥が下がる状態が腟断端脱です。後壁では直腸瘤が生じ、腟上部へ小腸が入り込む小腸瘤もあります。

前壁脱では排尿困難、後壁脱では残便感、頂部脱では骨盤の重さが目立ちます。実際には複数区画が同時に下がる例が多いため、最も突出した部分だけを確認せず、前壁・頂部・後壁を順に診察します。手術で支える部位も、この区画ごとの所見から決めます。

子宮摘出後にも腟断端が下がる頂部脱が生じます。前壁だけを修復して頂部支持が弱いままだと、症状が残る例があります。診察では最も下がる部位に加え、頂部を支えた時に前壁・後壁がどう変わるかを確認します。

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尿漏れと排尿困難が同じ人に起こる理由

進んだ前壁脱や頂部脱では尿道が屈曲し、尿勢低下、排尿開始の遅れ、残尿が生じます。腟のふくらみを手で戻すと排尿しやすくなる経過は、脱が尿道抵抗へ関与する所見です。

脱をペッサリーや診察で戻すと尿道の屈曲が解け、隠れていた尿道支持の弱さが咳時尿漏れとして現れます。これを潜在性腹圧性尿失禁と呼びます[1]。脱を戻した状態で咳テストと排尿後残尿を確認し、脱の手術と尿失禁手術を同時に行うか、術後の変化を見て追加するかを検討します。

脱を押し戻すと隠れていた腹圧性尿失禁が現れる例があります。咳試験、排尿後残尿、尿流測定を脱の整復前後で行うと、手術後の尿漏れや排尿困難を予測しやすくなります[1][2]。

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直腸瘤では、便の硬さと指で支える動作を尋ねます

直腸瘤では、便が腟後壁側へふくらんだ部分に入り、排便後の残便感や長い排便時間を生じます。腟後壁や会陰を指で支えると便が出やすいという症状は、直腸瘤が排便へ影響している所見です。

便秘には、硬便、腸管通過遅延、排便時に骨盤底筋が緩みにくい状態も関与します。直腸瘤を修復しても、便性状や骨盤底の協調が変わらなければ症状が残ります。食物繊維、水分、便秘薬、排便姿勢、骨盤底機能を確認し、手術で改善を見込む部分を明確にします。

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POP-Qは、処女膜から各部位までの距離を記録します

POP-Qでは、腹圧をかけた時の腟前壁、後壁、子宮頸部または腟断端の位置を、処女膜を0cmとして測ります。Stage 0〜4は全体の程度を表します。同じStage 3でも、前壁が主体の人と頂部が主体の人では治療内容が違います。

脱の大きさと困り方は完全には一致せず、処女膜を越える頃からふくらみを自覚する人が増えます。POP-Qの各測定値と、立位・排便・運動時の症状を記録すると、初回、ペッサリー装着後、手術後を同じ方法で比べられます。

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骨盤底筋訓練は、収縮と弛緩を正しく反復します

骨盤底筋訓練では、肛門と腟を内側へ引き上げる収縮を覚え、咳や持ち上げ動作の直前に働かせます。腹筋・臀筋ばかりを締めず、呼吸を止めずに収縮し、同じ長さで緩めます。必要に応じて触診や理学療法で正しい動きを確認します。

POPPY試験では、Stage 1〜3の女性へ個別指導を行うと、生活指導のみの群より12か月時点の症状スコアが改善しました[2]。軽度〜中等度、出産後、手術前の症状軽減に用います。効果は数日で判定せず、数か月の症状と日常動作で評価します。

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ペッサリー装着後に、歩行・排尿・咳を試します

ペッサリーは腟内へリング型などの器具を入れ、下がった臓器を支えます。装着した状態で歩く、咳をする、排尿することで、ふくらみ、残尿、潜在性尿失禁の変化をその日に確認できます。

リング型、支持膜付き、ゲルホーン型などから、腟の長さ、腟口の広さ、脱の区画、性生活の希望に合わせて選びます。自分で着脱できる人もいます。帯下、出血、腟壁びらんを防ぐため、適合と腟粘膜を定期的に確認します。Cochraneレビューでは比較研究の限界を含みながら、症状改善を得る女性が示されました[4]。

自己着脱できる患者は、洗浄と腟粘膜の観察を自宅で行えます。外来管理では、帯下、出血、びらん、感染、排尿状態を定期的に確認します。閉経後の粘膜萎縮が強い時は、局所エストロゲンの適否も検討します。

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PEOPLE試験では、ペッサリーと手術の両方で多くが改善しました

症候性骨盤臓器脱の女性をペッサリー開始群と手術群に分けたPEOPLE試験では、24か月の自己評価による改善が76.3%と81.5%でした[3]。ペッサリー群は事前に設定した非劣性基準へ届かず、適合不良、帯下、違和感から手術へ移った人もいました。

手術には麻酔、回復期間、再発、新しい尿漏れという負担があります。体への負担を抑えたい、将来の時期まで症状を管理したい場合にはペッサリーが使いやすく、ふくらみをより確実に改善し器具管理を避けたい希望では手術を選ぶ比重が増えます。

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手術では、頂部支持と各区画の修復法を選びます

手術には、経腟的に自己組織を縫い縮める方法、子宮・腟断端を靱帯へ固定する方法、腹腔鏡またはロボットで仙骨へ固定する仙骨腟固定術があります[1]。子宮脱では、子宮摘出後に腟頂部を固定する方法と、子宮を残して支持する方法を選べます。

子宮温存と子宮摘出を伴う術式の比較では、手術時間、出血、メッシュ露出などに差がみられました[5]。仙骨腟固定と経腟的自己組織修復の比較では、解剖学的耐久性とメッシュ関連合併症の違いが示されています[6]。頂部をどこへ固定し、前壁・後壁をどの材料で補うかを確認します。

経腟手術、仙棘靱帯固定、仙骨腟固定などは、再発部位と合併症が異なります[5][6]。子宮温存の希望、性交、腹部手術歴、便通、将来の妊娠を確認し、脱出している区画に対応する術式を組み合わせます。

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まとめ

骨盤臓器脱は、前壁、頂部、後壁のどこが下がるかによって、腟のふくらみ、排尿困難、尿漏れ、排便困難の組み合わせが変わります。POP-Qと生活中の症状から区画ごとの程度を記録します。骨盤底筋訓練は筋の収縮と腹圧への反応、ペッサリーは可逆的な支持、手術は支持組織の再建を行います。治療選択では改善率に加え、器具管理、手術回復、性機能、新しい尿漏れ、再発の違いを確認します。

治療目標はPOP-Qの数値に加え、立位時の違和感、排尿、排便、運動、性生活を本人が許容できる状態へ戻すことです。保存療法から手術へ切り替える時期も、脱の段階より症状と生活への影響を重視します。

手術後早期は排尿後残尿、尿路感染、便秘、創部痛を確認します。脱出感が改善しても、新しい尿漏れや排尿困難が現れた時は、尿流測定と診察で原因を調べ、術後経過として記録します。重い物を持つ仕事へ戻る時期、便秘と咳の治療、骨盤底筋の再開も、創部の回復に合わせて決めます。